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生涯で採取するハチミツは小さじ1杯

  • blueboxantiagingfa
  • 2023年10月5日
  • 読了時間: 6分

更新日:2023年10月12日



1匹のミツバチが生涯において採取してくるハチミツは僅かティースプーン1杯分の量であることは耳にしたことがあるのではないでしょうか?


ミツバチのライフサイクルは主に植物が盛んに成長する春咲きから秋頃までの季節に活動するサマービーと、食糧が徐々に減っていく秋頃から年が明けて植物が咲き始める初春までを活動するウィンタービーに分けられています。


ミツバチの寿命は国や地域、気候にもよりますがサマービーが”約30~40日間”、ウィンタービーは”約3か月間”からミツバチによっては”6か月間”生存出来ると言われています。


なぜ同じミツバチなのに季節によって寿命の長さが大きく異なるのでしょうか?それはミツバチが生存した季節によって任される仕事が異なることが大きな理由となります。




CONTENTS
















サマービーの仕事

寒い冬を越えていよいよ草木の成長が始まる頃、巣箱の中ではものすごい勢いで女王バチの産卵が始まります。 ウィンタービーからサマービーへバトンタッチが行われ、アカシアの花が咲く頃にはミツバチの大群に仕上がります。 サマービーの役目はコロニーが無事に来年を迎える為の「食糧の確保」と「子孫の繁栄」の為、様々な危険やリスクを顧みず日々忙しく活動しています。


ミツバチは羽化してからすぐにハチミツを集めに大空へ飛び出すのではなく、羽化後数日間はまず巣内の掃除作業からはじまり、その次は幼虫の育児や女王バチへの餌係が任されます。 羽化して1~2週間はこのような仕事をして生活し、それから巣の増築作業や蛹になる幼虫の巣房に蓋を閉める作業、先輩の外勤蜂が外から集めて来た花蜜を受け取りハチミツに変える作業、そして外敵から巣を守る為の門番をしたり、死んだ仲間の運び出し等を経て約3週間。。。やっと花蜜や花粉の採取業務が始まります。



過酷すぎる外勤業務

残りの人生があと10日間程になった頃、サマービーは最後の重労働に取り掛かります。 蜜源目掛けて毎日空を飛び、何度も繰り返して巣に花蜜や花粉を持ち帰ります。

ミツバチの個体自体が小さいので普段あまり目にすることが少ないかもしれませんが、これを人間で例えると興味深い事が沢山見えて来ると思います。


ミツバチ1匹の体重はおよそ0.09gほどで、体重45kgの人間で例えると50万倍の比率になります。 仮に1日飛び回ってミツバチが集めた花蜜や花粉の重さが0.4gだった場合、人間に換算すると200kgの荷物を1日動き回って集めることになります。 雨の日が無ければ10日間休まずに動き回って合計2tの荷物を自力で運ぶイメージです。。。


体長が15ミリメートルのミツバチにとっては仮に巣から6キロメートル離れた場所への飛行も体長の40万倍の距離になり、この比率を身長150cmの人間のに当てはめた場合、移動距離はおよそ600km(東京から青森や高知への移動距離)になります。


コロニー全体として見た場合、60kgほどの花蜜と20kgほどの花粉を集めるためには、外勤蜂達は散在する花々へ4000万回にも及ぶ採餌飛行を繰り返します。 そして、その飛行距離は合計でおよそ2000万キロメートルにもなると言われています。


あくまでも仮説ではありますが、それでもミツバチはとてもアクティブな生き物である事は間違いないと思います。



ハチミツは精勤の結晶

「体重0.1gすらも無い儚げな体で、引っ越し業者ばりに働くおばあちゃん」そんなイメージのミツバチですが元気の秘訣と言えば、やはり一生懸命集めたハチミツと花粉ではないでしょうか?エネルギーの原動となるハチミツは、食糧が全く無い極寒の季節で生き残る為の『スーパーフード』だと言われても納得です。


しかし、おばあちゃんが必死で集めた花蜜の中身は『半分以上が水分』であり、そのままでは年を越えるまで保存することが出来ない状態なのです。


そこでミツバチたちはまず、花蜜に含まれる糖を「ブドウ糖」と「果糖」に分解します。 糖を分解することによってハチミツの栄養素が体内に吸収されれる効率を高め、機動力や巣を保温する作業を瞬時に行えるようにするためです。


そして約1ケ月~3ケ月の合間、花蜜の水分を20%以下まで絞る為に羽を羽ばたかせ蒸発させて雑菌が繁殖出来ない長期保存が可能なハチミツを作り上げます。 ミツバチが必死で集めてきた花蜜がハチミツになる時には更に重さが軽くなっているのです。 [参照:みつばちのーと] [参照:野生ミツバチの知られざる生活]



ウィンタービーの仕事

地球に存在する大半の昆虫は地中で冬眠をして乗り切りますが、ミツバチは冬眠をしません。


また花を訪ねて毎日外へ繰り出すサマービーとは対称的にウィンタービーは生涯をほぼ巣内で過ごし、春の訪れが来るまで寿命の続く限り、子孫繁栄の為に女王バチを守り抜きます。


人が寒い時に震えることによって体を暖めるのと同様に、ウィンタービーは貯蔵された餌を食べそのエネルギーで飛翔筋を震わせコロニーを暖かく保ち、女王バチを凍死から守りつつ春の産卵に適した環境をサポートしていく事が仕事なのです。


またタンパク質(花粉)豊富な食事で成長するサマービーと違い、花粉の少ない食事で成長したウィンタービーは腹部に特大の『脂肪体』を発達させます。 この脂肪体には脂肪やタンパク質、炭水化物やその他の分子を纏め、保存し分解する機能だけでなく、越冬時に有効的な卵黄タンパク質(ビテロジェニン)を生成する機能を備えています。


ビテロジェニンは代謝を調節し免疫システムを強化して寿命を延ばす驚くべき物質で、夏期に収穫した新鮮ではない餌であっても脂肪体や下咽頭腺に貯蔵し再び甦生させる事で、新しく生まれてくる幼虫に適した状態の餌を提供することが出来るのです。


夏期の過酷な貯蜜作業などアクティブな活動が少ない事がウィンタービーの寿命が長い理由と捉われがちですが、ビテロジェニンによって得られている効果も含まれているという結論が正しいようです。


春の訪れに反映し巣内の幼虫も増えていきます。しかし、それと同時に餌を幼虫に与え続けたウィンタービーの脂肪体は収縮し、腺の生成も少なくなり体が瘦せ細ってしまうのです。[参照:honey bee suite][参照:Gees Bees Honey Company]



ミツバチに感謝

生まれてくる季節によってミツバチたちの役割が異なり、そしてそれらが絶妙に機能されている事、子孫の繁栄を絶えず続けるために命がけで使命を全うするミツバチが社会性の高い生物に挙げられる理由に納得できたと思います。


こうしたミツバチ達の汗と涙の苦労を知ると、たかが一滴だけのハチミツだとしても無駄にしてはいけない気持ちになります。


そして世界全体の野菜や果物などの作物の受粉作業に対してミツバチは半分近くを担い、農業に貢献していると言われています。 ミツバチが問題なく子孫繁栄を続けられる事が、私たちの生活に直結している事も忘れてはいけない事だと思います。


世界人口が80億人へ差し迫り、気候変動、環境汚染、食糧不足など複雑怪奇な問題を抱えている現代だからこそ、改めてミツバチに大きな敬意を表し、ミツバチが無事生存していく為に自分が出来ることについて向き合っていきたいと思いました。


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